山の中で皮が剥がされている木を見つけたガハクが、「熊だろうか?でも爪の痕が無いんだよね」と言う。鹿が幼木の皮を食べちゃうという話は聞いているけど、太くなった木の幹は食べないだろう。人がやったことだとしたら、何の為に?
ふと思い出した。子供の頃に真っ黄色の薬用酒を見せられたことがある。一升瓶の酒に漂う木の皮は『キハダ』から採ったものだと教えられた。早速ネット検索したら、すぐに出て来た。梅雨時が採取に適しているという。まさに裏山の傷つけられた木の幹の姿そっくりではないか!
山菜ブームが去ったかと思ったら、野鳥をおびき寄せる罠を仕掛ける人がいたり、とうとうキハダの採取人まで現れた。誰も来ない放ったらかしの山だと思っていたが、ときどき変わり者にも遭遇する。
この山にMTBでガハクと登っていた頃、山頂でトライアルオートバイの一団に出会ったこともある。コースを作りたいと、チェーンソーまで持ち込んで、木を斬ったり石を退かしたりしていた。同じトライアルでも自転車の方が平和だ。排気音もしないし、聞こえるのは自分の呼吸音だけだ。あの時、彼らにも驚かれた。「ここまでこの自転車で登って来たんですか?すごい体力ですね」って。まあ、今はとても山のてっぺんまで漕いでは上がれないけど。
山が人を呼ぶのか、人が山に会いたがるのか。役に立つ木のキハダは度々皮を剥がされるけれど、こうやって少しずつまた水を吸い上げて生き続けている。
放っておいて欲しいと、山の小鳥たちとガハクは言っている。ガハクの絵に『薬草を採る中国人』というのがある。私が山で蔦を引っ張っている姿が面白くて、描いたのだそうな。楽しい山の絵だ。(K)
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