いつの間にか、赤い鳥が描き変えられていた。振り返ってMの家族の方を見つめている。
「自分から取りに行かなくても向こうからやって来るからここで待っていればいいよ」と叔父に言われたのはもう36年前のことだ。あの時、ビデオカメラを抱えて山の駅に降り立ち、周りの風景にノスタルジーを刺激された叔父は、しばらくそのまま駅のベンチに腰掛けていたいようだった。
ほとんどの人は、相手に言っているようにして、ほんとは自分に言っているような言葉を吐く。叔父だってそうだ。きっと昔の自分にそう言ってやりたかったのだろう。お金を稼ぐために東京に出て、昼と夜の二つの仕事を掛け持ちして稼いだお金で事業を起こした人だから。
コロナのせいで小さな会社や事業が潰れて行く。虚業と芸術が混同されて行く。仕事とは何か?目的は何か?本当にやりたいことか?金になればどんなことでも?
『Mの家族』の継承者であった赤ん坊は街に出た。そして66で亡くなった。今霊界の森の中に小さな楽園が生まれようとしている(K)
よく見られている記事
-
久しぶりにガハクが書いている。 新しい年。2022年の今日はもう3日の月曜日。 2020年の冬に僕が重症肺炎で入院してから二人で交代で書いていたものをKだけが記述していた。 去年の30日の午後、いつも二人で行く裏山の頂点に立った時、彼女がうづくまり動けなくなった。僕一人ではとう...
-
ガハクが72日ぶりに筆を取った。どの絵から始めるのだろうと見に行ったら、倒れる直前まで描いていた『Mの家族』だった。しかも踏み台に乗って高いところを描いていた。 また絵が描ける日が来るなんて、しかも今日は日曜日だ、朝の明るい光線の中で描いている 、、、ジーンとする想いに浸...
-
手の指のひとつひとつを磨いては彫り直し、彫り直してはまた磨いて、少しずつ温かな手にしようとしている。この手がうまく彫れたら、顔も同じように優しい形を与えられそうな気がして来た。 今日ガハクは、担当医とその上の大先生と専門医との3人に面談したそうだ。右肺に開いた穴は、ステロイ...
-
今日の午後久しぶりに絵を描いた。 何かをそこに発見して修正したり付け加えたりするという作業。どの絵をその時描くか、直感に従って絵を選ぶ。正面に置いた絵を描きながら、ふと横にある作品に手を加えることもある。 それがボクのいつもの描き方なのだが、今日は闇雲にどうにでもなれとばかり手...
-
スコットのダンスを見ていたら右腕にポツンと水滴が落ちた。あゝこれはよく何もないのにチクっとしたりする例の神経の突発的反射作用だろうと思いながらも当たった所を見た。実際に濡れて光っていた。左手の指で触わると確かに液体の感触が。雨漏り?思わず天井を見上げた。 白い人を見てからもう...