もう杖を持たずに山に散歩に出かけるようになったガハクが、「どこかに丸棒がないかなあ」と言う。何に使うのか聞いたら、草を払ったり、石を突っついたり、振り回したりして遊びたいのだそうだ。さっそく彫刻のアトリエから自転車に括り付けて持ち帰って来た。
昔取った杵柄だ。思い出しながら振っている棒の動きと、その体勢が様になっている。只の棒でも、鍛錬した者が使えば充分な武器になることを知った。型の中にその威力を集中させる形式が組み込まれている。敵のみぞおちを狙って突き、怯んだ無防備なこめかみを一撃で割るという動きを 流れるように出来る。すっかり体に覚え込ませてある。
ダライ・ラマが、「人は武器を持ったら使いたくなるものだ。武器を持たないようにすることだ」と言っていた。愚者に武器を持たせるな。人と人の間にナイフを置くな。
ガハクは山や野原を歩くのに棒を友とし歩くんだ。猿は石を投げないし、投げ返そうともしない。だからガハクは、棒を振る真似をするだけだ。石を投げるフリをするだけで充分なんだ。そういうところで平和に暮らしている。(K)
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