あと1週間でガハクの病院通いも終わりだと思っていたけれど、もう少し伸びるらしい。肺の傷を確かめるために 来週CTを撮ることになった。「こんな時期ですから」と先生はコロナのことを心配している様子だった。肺に少しでも弱点があると、そこがまた肺炎を起こし易いのだそうだ。そういう古傷に起きる肺炎を『器質化肺炎』というらしい。人工呼吸器で奇跡的に助かった肺は相当なダメージを受けたはずで、完全に治ったとは言っても、慎重に傷の痕を確かめておきたいということだった。
突然できた気胸でさえ自然と塞がったガハクに起きた奇跡を CTは映し出すことが出来るだろうか?
怪物とは化け物のことだ。この世にもあの世にもいる怪物。死を持ってしても逃れられない怪物を ガハクは混濁した意識の中で見て来た。その実態を知りたくて、今日はずっとガハクにインタビューしながらハンドルを握っていたけれど、まだ完全には捉えられない。それはとても怖ろしいものだそうだ。あんな怪物に(怪物の世界に)飲み込まれるくらいなら死んだ方が増しだと思ったが、死んでもずっとついて来るので生還するしかなかったのだという。コロナで亡くなったコメディアンがあの怪物に捕らえられたままでなければ良いがと、ガハクは本気で心配している。(K)