霧雨は止みそうもない。3月は今日で終わり。ジャガイモはまだ半分残っている。ネットが先か、ジャガイモが先か、しばらく迷った。覚悟を決めて雨合羽を着込んだ。
昨日のうちに柵囲いの入り口は作っておいたので、 あとは杭を打ち込んで、支柱を立て、紐で結んで、ワイヤーで引っ張って、ネットを被せるだけだ。簡単だと思って勇んでやり始めた。雪が降る冬場は支柱を倒せば撤収も楽。こういう知恵はだんだんと付いて来るもので、我ながら大したものだと思っているんだけど、ネットの破れを見ると、去年の悲惨な敗退が思い出されて少し辛かった。猪は何度も裾を鼻面で破って侵入。猿はネットの劣化した部分を引き裂いては里芋とカボチャを盗んで行った。だから今年こそは、手抜き工事はぜったいにやらない。少しの緩みでも獣達は見逃さないから、気を引き締めてしっかりやった。
煙突から紫色の透き通った煙が立ち昇っていた。体がすっかり冷えたから今日はここまで。アトリエの中に入るとぽかっと暖かった。ジャガイモの植え付けはまた先延ばし。
彫刻の胸に砥石を当てながら、ガハクが今朝話していたことを思い出していた。
「肺活量が増えて来た気がする。深く吸い込んでもまだ余裕がある感じがするので、もっと吸い込んでみると、肺がぐっとせり上がって頼もしいんだよ」そうか、胸が強かったから生き返ったんだなあ。
この4月は、「今までで一番楽しい季節になるよ」とガハクが言う。(K)
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