2020年3月20日金曜日

鋭敏な熱意

ガハクは生まれ変わって帰って来た。ビシビシ判断して来る。曖昧な返答をすると即見破られて反撃が厳しい。しかしこの先までふたりで行けたら目が四つになって、もっとはっきり見えて来るものがあるだろう。こういう状況は初めてだ。彼の目は強くなった。新しい目から見ると、要らないものは一目瞭然、バシバシと片付けている。

昨日は棚の中に突っ込まれていた何年分もの年賀状を見つけたそうな。紙類は小さく引き裂いて破ってゴミ袋に詰めるようにしているガハクは、リハビリも兼ねているのだ。ずんずん片付けているうちに心が軽くなって行くのが不思議だった。「なんて気持ちがいいんだろう」ところが、なかなか破れない葉書があった。精一杯の力を入れても破れない。確かにリハビリ中ではあるけれど、他の紙はさっと破れるのがほとんどだ。「おかしいなあ、誰のだ?」和紙だったり、特殊なフイルムコーティングが施されていたりする。「結局年賀状なんて政治なんだね」と結論したガハクは、その濃淡を明確に見破った。「一切の過去を捨てよと言われている通りだ。これからの僕たちは愛に生きるのだ」とキッパリと言うガハクである。

足の先に深い奥行きが欲しくて、この三日間そこばかりを彫っている。(K)


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