昨夜はいつまでも話していた。布団に入ってもまだ話し続けて、新聞配達のバイクの音が聞こえたのでようやく寝ることにしたのだが、それでもしばらくポツポツと会話。そのくらい話が尽きなかった。死の恐怖をどうやって押し除けたのか、何に守られたのか、ガハクの記憶が曖昧な時期を補完しながら時空を埋めていく作業は面白い。浮き上がって来るものを凝視する。
この家の音を聴きたいというガハクの意向を汲んで、音楽はかけないでずっと過ごしている。今朝は鶯の声に起こされた。ほとんど眠れなかったガハクは始発の電車が秩父から走って来るのに耳を澄ましていたそうだ。
アマリリスが明日あたり開きそうだ。 山で死んだガハクの親友のお母さんがくれた球根なのだけれど、毎年美しい花を咲かせてくれる。もう20年以上こうやって部屋の中で蕾を膨らませて、開く頃には春になる。大事な息子を亡くした人にいろんなことを教わっていたことが分かった。花は実を残す。(K)
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