風景画を描かねばならぬ描きたいと思ってきた。どんな絵を風景画というのか厳密には言えないくせに、その思いだけが執拗に張り付いていた。
家の庭で眠っているトワンの事を思いながら毎日のように山を歩き回るようになって数ヶ月が経った今、山のあちこちでモチーフに出会う。油絵の前に銅版画にしてみようとか、こんな風景が絵になるだろうかとか考えながら歩いているが今はスケッチはしない。
描こうとして見れば、描かないからこそ見えるものを見れなくなるからだ。意識の集中だけが絵に必要なのではない。無意識に入って来るものを受け容れる時間こそが必要だ。死んだSがこれから行く剱岳登山を心配する父親に言ったそうだ「体験しなければ本当の色は出せない」と。(画)
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