「寂しいね」の一言で一気に気持ちが沈んでしまった。ずっと我慢して頑張って抑えていた言葉がガハクの口から出たからだ。でも寂しいことは事実なわけで、それをどうしろこうしろ覚悟しろと人に言えるはずもない。こうやって人は互いに苛み始める。
でも、昨夜は違った。もう今までの私とは違う。トワンが死んでからは『寂しさ』は前に進むキッカケ、兆しになった。落ち込んだ気分のまま、深夜にモチーフのセッティングを始めた。すると、何かツーンと張り詰めた気体がやって来て、真剣さが増した。寂しさは皆いっしょなんだ。
日曜日は朝から静かな雨。玄関に生けた乙女椿の一輪がぽろっと落ちたので、それをトワンの石の上に載せておいたら、雨に濡れたピンクの花とトワンの石を眺めている人あり。木を見上げてその元の木を探す人あり。
トワンの石の前で泣いた人は犬を飼うことにしたそうだ。そのうちライオンのようなフサフサの毛に覆われた子犬がこの庭に遊びに来るだろう。(K)
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