ひどい痛みに耐えて一月寝たきりだったガハクがやっと起き出して、風呂に入った時のことを思い出す。「あれから僕は変わった」とガハクが言うのを証明するように、トワンが風呂から上がって来たガハクを嗅ぎまわり、精一杯尻尾を降って、最大級の敬愛を示す低い姿勢の伏せをして、熱い視線を送り続けていた。
変わろうとしても変われないのが人の性質だけど、あれから彼ははっきりと変わった。絵を描いて生きて行きたいという純粋な思いにくっ付いていた余計なものが、だんだんと落ちて行った。
よちよち歩きで室内を何とか移動して過ごしたその後の1ヶ月も、窓から見える近所の老人の散歩姿に、「あゝあの人は自分の足で歩いている」と、羨ましそうに眺めていた。ガハクはあの時の落ち込みは今も忘れていないそうだ。 死ぬのはもう怖くないと言う。描きたいものがはっきりと見えて来たからだろう。(K)
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