フランス人のある画商が書いたという画家の入門の手引書のような本があった。他に類を見ない種のもので何度も読み返しずいぶん精神的にも影響を受けたものだ。
その中に「いつ頃から絵を売ることができるか」という項目があった。人に自作を売る「資格」という事を言っているのだ。若い僕はそこに画家の豊かな生活を期待してワクワクしたものだったが、今では何かすごく面はゆい。こいつは「どんな絵を買ったらいいか」と書いてあっても同じだったろう。
どちらも遠い国の話を聞いてるようだと笑ってしまったが、いやこの状況はむしろとても幸運なことだと真顔で画家は思うのだった。(画)
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