2021年5月25日火曜日

月の光

直に触れることができれば、同時に見ることができれば、いっしょに聞くことができれば、誤解も生まれないだろうに。間に立つ者が訳のわからぬことを言い立て解説など始めてからは、人々は真理の光を直接浴びることが無くなってしまった。 権威の冠をかぶった者たちと金持ちたちが、高いビルの屋上に作ったプールで月の光と太陽の熱を浴びて泳いでいる。

今夜は夕飯が終わってすぐに楽器を弾いた。ガハクと練習している『月は踊る』は、とても不思議な曲なんだ。聴いていると何でもなく簡単そうに思うのだけど、自分で弾くとなると難解で速過ぎてどこでメリハリを付ければいいのか分からない。リズムとメロディーが出会うポイントが掴めないのだ。それでも毎晩二人で弾いていたら、遂に今夜ノリが出た。月の光がさして来た。音楽は誰のためにあるか、今夜分かった。月に対峙した孤独で寂しい個人のためにある。(K)



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