ガハク今日は大活躍で、アトリエのトタン壁をべりべり剥がして回ってくれた。そして夜はいつものようにキャンバスに向かっている。しかも白の絵の具まで練ったそうだ。
「最初はぐったりしていたんだけど、やり始めたらだんだん元気が出て、復活したよ」と言う。空に白をぐいぐい塗っていた。間にグレーの雲が縦に流れて縞模様を作っている。
少し疲れているくらいの方がいいのかな。何も考えないで描いている時にいいものが出て来たりするもんねえ。不可能を実現させるのは他のもので、私たちはただ戸を叩き続けるしかないとシモーヌ・ヴェイユは書いているけれど、そこまで分かっているのに何であんなに早く死んじゃったんだろう?とガハクに話しかけた。
すると、「目の前のことから逃げれなかったんだね」という答えが返って来た。あゝ熱意か。外にあるパッションと内なるパッションがぶつかり合って立ち向かう。最後は体がすっかり消耗しちゃったんだろう。調子が悪いと早く寝ようとか、今日は休んだ方がいいかな、とか思えなかったんだね。
二人でやれば何とかなる、何でもできる。ガハクが生きて還って来てくれて、ほんとうに良かった。(K)