こんな綺麗な水が描けるんだったら、何も話す必要はないな。
タルコフスキーの映画『アンドレ・リュブロフ』の無言の業。ただ口を閉ざしただけじゃない。絵筆を取ることも止めたんだ。絶望した少年を励まそうと思わず近寄り抱きかかえ、禁を解かれたように初めて口を開いて出て来た言葉が、「君は鐘を作れ!僕は絵を描く。一緒にやろう」というのだった。ドッと堰を切ったように泣いてしまった。こんな荒涼たる世界に何があるって?こういうことしかないじゃない!
画室を覗いたら、女の子の着物の色が塗り替えられていた。夕暮れの暗さの中で白く輝いて見える。赤い着物の少女はどこかへ消えた。絵の言葉は、綺麗な水から出てくる。(K)