2020年12月12日土曜日

誰も教えてくれなかった彫り方

 磨いてからまた刻むと、さらに奥の形が見えて来て、もっと彫ったらさぞいい形になって美しいだろうなあと思う。

昔の人はこういう風に彫っていたに違いないんだ。磨くと石の色が変わるし、形が一旦甘くはなるのだけれど、そこに線を入れるとくっきりとして来て、ちょうどイラストみたいなお洒落で見た目は派手な感じになる。

でも、そこでやめちゃうと品がなくなるんだ。そこをもう一つ先までやるのが一流の仕事であったはずなんだ。

現代では機械でそこをすっ飛ばすから、霊的なものが何にも残らなくなったということだ。全ての工程を 人の頭と、目と、手が、ひと繋がりになってやれた時に初めて、時間なんていうものが持ち込んだ焦りや抑圧や欲望の欺瞞が失くなる。

やりたいだけやってみたらいいと自分に言えるし、あゝよくここまで来れたなあと思えるし、もっと先がありそうだぞと希望が湧いて来て、その為に始めた筋トレだって面白くなって来る。

独りでアトリエにいてコツコツコツコツ、ゴシゴシゴシゴシと何時間も彫ったり削ったりしていることが無為だなんて感じないんだ。それでも私のことをキチガイと言う人は誰もいない。自転車で通り過ぎると、手を上げて合図を交わす人もいる。長生きはいいもんだ。こんな生き方もあるということを示せるのだもん。(K)



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