昨日は鼻の穴を彫っていた。犬の鼻は意外に大きいのだ。穴の縁が崩れぬように慎重にやらねばならない。深さはそれほど必要ではないけれど、鼻の向きが大事で、ピチッと角度が決まると品がいい。
今日は耳を直した。犬の耳の穴は人と同じで、目の後ろにある。耳を立てても穴の位置が変わる訳じゃないのに、つい側面を彫り過ぎてしまって量が足りない。でもそこは彫刻、何とかなるだろう。
彼は何を見ているのか?大好きなもの、大好きな人、大好きな何かだ。目と鼻と耳は三ついっしょになって同じ方向をじっと見つめ、風の匂いを嗅ぎ、小さな音も聞き逃さないように耳を立てている。
もうすぐ山から月が出て来る。今年最後の満月は三十日。冬の月は天頂を通る。(K)