山の中に陽だまりができる。もう少し進むと道は陰に入って暗くなる。 ここは山の北斜面だから明暗がはっきりしている。
「時間というのは、山の中を歩いたり、草や木を眺めたり、薪を集めたりしている時に作っているんだね。そういうことをやるには時間がないとか言うけれど、そういうのは時間じゃないんだ」と、山で考えたことを話してくれた。
ガハクが山に行っている間、私はバイオリンを弾いている。やっと一つの曲を何も見ないで弾けるようになった。何の目的もないのに弾く。こういうのは初めてじゃないかな。楽しいとか嬉しいとか面白いというシンプルな気持ちが、悲しいとか寂しいとか苦しいという想いにまさって来て、救い上げてくれる。日々鍛えている筋力は馬鹿には出来ない。
今日は今シーズン初めてアトリエの薪ストーブに火を起こして暖を取った。煙突掃除も完璧にやったから、紫色の透き通った煙がすーっと上がって西風にゆっくり押されてたなびいた。この冬はいい仕事ができそうだ。(K)