「この緑は使えないな、、、でも白を混ぜると何とか使えるかも、、、やっぱりダメだ。黄色を混ぜると少し落ち着く。こういうのは混色して使うしかないね」と、練ったばかりの絵具をパレットに出して見せてくれた。
パレットに出すと濃紺にしか見えないウルトラマリーンは、ガハクが好きな色だ。白を混ぜてみせながら、「ね!良い色でしょ」と言う。確かにしっとりとしていて、この家の窓から見える朝の空の色だ。
端っこに派手な青を出して、白を少し混ぜてから、「Mの家族の空はこれで塗ったんだよ」と。これも絵具メーカーが最近作った新色だそうな。わざと違和感を出すのに使ったんだな、と思った。
「今日は5色も絵具を練ったけど、ぜんぜん疲れなかったよ。やっぱり強くなったんだなあ」毎晩パレットに残った絵具をきれいに拭き取って、オイルで磨いてから1日の仕事を終える。「君子豹変す」とは、ガハクのことだ。(K)