ついに背中の辺りもくり抜いた。向こう側から光が差し込むと、天窓が開いたようにパッと明るくなる。彫刻の醍醐味を味わうのは、こんな時だ。やっとここまで彫れるようになった。よく切れる道具があっても、それを使える腕がなければ脚が折れてしまう。だから今までくり抜けなかったのだ。行き止まりの奥まった白い穴の中では、光が乱反射するばかりで、フォルムも輪郭もぼんやりして見えなくなってしまうのだが、光が差込んで回り込むと影が遊び出す。脚の間は回廊のようだ。回転台をクルクル回して、しばらく喜んで眺めていた。
雨が上がるのを待っていたら、帰りはすっかり暗くなってしまった。今夜はペダルを踏む脚に力が入って気持ちが良かった。心が軽いんだな。(K)