今年は苺があまり採れなかったのは、春先から雨が多くて日照不足だったせいもあるけれど、リュウノヒゲが密生していて苺を圧迫しているからだ。今日は朝から一大決心をして一本残らず引っこ抜く覚悟で庭に出た。蚊取り線香を腰からぶら下げて、モミジの根の周辺から取り掛かった。
リュウノヒゲは一度根を張ったら増えこそすれ、決して絶えることはない丈夫な草だ。良いことにも悪いことにも使われる。雨トイから流れ出る水を他所に向かわせる工作にリュウノヒゲで水路を作っている人を見て、感心もし、呆れたこともある。
トワンが子犬の頃、毎日アトリエに車に乗せて連れて行った。リュウノヒゲがびっしりと生えているのを見つけて、バサッと胴体着陸で飛び込んだ。草の波をかき分けて茶色の犬が泳いでいる。愉快な眺めだった。
アトリエの野原に除草剤が撒かれるようになってからは、リュウノヒゲはだいぶ無くなった。草が大嫌いな人がいるんだ。特にリュウノヒゲだけを狙って薬を振りかけて焼き殺しているらしい。そこだけ茶色になって枯れているからすぐ分かる。リュウノヒゲが枯れて地中に空洞ができちゃって、彫刻が倒れて壊れてしまったこともある。内心カッとなって怒れたけれど、とぼけている本人に状況だけを伝えて、気持ちを抑えた。悪事はやった人に戻っていくのだ。
そんなリュウノヒゲをすっかり綺麗に取り除いた後、ドラム缶に野菜クズを放り込んで作った堆肥を苺の苗に撒いて回った。来年の春こそ、大きくて甘い苺をいっぱい摘もう。(K)
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