国道から離れて田舎道を走り出した辺りで、ハイカーに呼び止められた。周りに車も人もいなかったので、低速にしてその人の方へハンドルを切って近づいた。自転車に乗ったまま、
「どうしました?」と尋ねると、怯えた表情で今来た道を指差しながら、
「 猿がいますよ!」と、まるで猿に聞かれたら困るという風に小声で言うのだ。もう70に近いその老人は、手に胡桃がいっぱい付いた小枝を大事そうに抱えていた。低山歩きを楽しんでいるんだろうけれど、獣に会ったことはあまりないらしい。
「大丈夫です。いつもここを通って慣れてますから」と笑って答えた。
数十メートル走ったところで、道路脇の斜面で猿が2匹、木苺を摘んで食べていた。ポロポロと道にもオレンジ色の粒が転がっている。逃げもせず、一定の距離を保って生息する動物たち。彼らは人間とのソーシャルディスタンスを知っている。(K)
⇩ガハクの山散歩:雨をいっぱい吸い込んだ山が、余った水をこんなに綺麗にして吐き出す。これは飲める水だ。美味しい水だ。トワンなら口を直につけて飲むだろう。あの子は川の水が好きだったからね。
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