2020年7月2日木曜日

頭の形

ずっと以前に、あれはもう30年前か、、、アトリエのすぐ前の空き地でおじさん二人が鉄筋曲げの作業をしていたことがある。トンネル工事に使う部品を工作していたらしい。冬の寒い時期だったから、インスタントコーヒーを入れたマグカップを持って行ったら、それを飲みながら、おじさん二人が漫才のボケとツッコミ的な会話を始めた。
「石を彫るなんて大したもんだ。俺にも出来るかな?」
「お前なんかに出来るもんか。よく見てみろよ。頭の形が違うよ」と自分の後頭部をつるんと撫でて見せたのだ。その言葉を聞いた瞬間ドキッとした。彫刻家でもないのに、何でもない人のように見えるただの労働者が、頭の形を知っている。その時の空に響く声の広がりまでよく覚えている。

 頭の大きい小さいじゃなくて、頭の形というものがある。そこに何が詰まって閉じ込められて守られているか。そこから何が発散しているか。スフィアは香る。(K)


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