2019年7月24日水曜日

目の奥に映っている人を彫る

顔を彫っていると時々気が遠くなる。少し休んでは、また目から彫り始める。だから目だけがどんどん深くなって行く。鑿の先が届かなくなるとヤスリで引っ掻く。それでもまだ影が薄く感じられるから、尖った鑿に持ち替えて突っついたりしている。左右の目のバランスはとっくの昔に壊れてしまった。しかしそんなことは気にしない。大丈夫なのだ。目というのは不思議なもので、いや、顔自体もそうなんだけど、右と左はシンメトリーじゃないんだ。右が情愛なら、左は知性。やっと両方の極が呼び合うような形が彫れるようになった。自覚的に見つめてやらないと簡単に消えてしまう美しい幻こそが、実は存在そのものだと気がついた。好きなものしか見えないのが人間の目なのだ。だから意識の革命とは、愛するものを見つめる目を鍛えることなんだ。(K)


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