山や木や川を描くことが多いのは山里に暮らしているせいでもある。
僕が生まれ育った環境は全く違う。軒を接するように建物が立ち並び人通りの多い街場だった。
人々の話声、バイクや車の音、ガソリンの匂い、食堂の料理の匂い、揚げ物の匂い、魚の匂い、隣家の夕餉の支度の音、パチンコ屋、毎日のように聞こえる常磐津の鼓や三味線の音が聞こえたりしていた。
通りを挟んで向かえに映画館の裏口があり、隣家のよしみでちょくちょく無料で映画を見せてもらっていた。
ある日そこから火が出て消防車が来る大騒ぎになった。
大勢の見物人の肩越しに僕も見たが、木ではなくコンクリートの建物なのに火が出ていたのが子供心に不思議な気がしたものだ。モクモクと出ていた煙は白と灰色だったが昼間のせいか火はよく見えず時たま黄色い光がチラチラしていたのを覚えている。
火が収まった跡、壁は黒く相当汚くなったが建物自体は崩れたりもせず黒いススもそのままで、その後も営業は続いていたから大した被害ではなかったのかもしれない。
この絵を描いていると幼い頃の街の様子が蘇る。(画)
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