2019年3月18日月曜日

話す手

話しているこの人の手は、花のように彫ればいいんだ!そうだ、チューリップのように可愛らしく。
 そう思って彫り始めたら二人の胸の間を埋めていた石の塊がスイスイ削れていく。いつの間にか奥まった暗がりまでノミが届くようになっている。技術が上がったか?意識が目覚めたのか?全部だろう。焦ることもなくなった。誰に頼まれてやっているわけじゃないし締め切りが迫っているということもない。デナリでの展覧会は七夕辺りにやろうと決めてはあるが、マスターが「ゆっくりやってください。うちはいつでもオッケー」だと言ってくださるのも頼もしい。『自由』とは熱意あるものに与えられるもの。生命力の別名だ。

向こう側の手もうっすら刻んだところで今夜は道具を置いた。外に出たら満天の星。なのに顔に冷たい粒が当たった。風花だ。(K)


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