ガハクの『夏』の絵を見つめていると、緑の光線が、梢を透過し、枝の間をすり抜けて私の方へやって来る。キャンバスの前に立つ少年の目が朱文金のようだ。真っ黒でくりくりした目、まばたきもせず対象をじっと見つめている。パレットが緑の光線に照らされている。一色だけで描こうとしている。一色あれば十分か。
水槽を買って水温を一定に保つためのヒーターも取り付け、室内で飼うようにしてからは、金魚たちはみるみる元気になった。輝く水とは、グリーンウォーターのことだったのか。魚が生きて行くのに必要な微生物たちが活動している水の色は、淡く輝く緑色をしている。
グリーンエアに満たされて、S氏は今日も天界で絵を描いている。ガハクとぴったり視線を重ねて、真っ直ぐと、彼らは決して標的を外さない。(K)