2021年5月18日火曜日

少年ガハク

『少年老い易く学成り難し』
人は一年でこんなに成長できるのかと、胸が熱くなる。あの日から今日までのことを一つ一つよく覚えている。ガハクが倒れて、死にかけて、生還して再び筆を取るまで75日かかった。今日のガハクをハグすると、胸の厚みに驚く。こんなに愉快な日が訪れるなんて、一年前に想像できただろうか。

『意志あるところに流入あり』
生まれ変わることを与えられて、乗り込むように積極的に乗り出した。毎朝妖精たちに会いにいくと、山にヨチヨチ歩きで出かけていく姿は、ほっそりとして背が異様に高く感じたものだ。大学病院の廊下でリハビリを受けていた頃、歩行補助機につかまってゆっくり一歩ずつ歩き始めた時の背の高さ。看護師たちにも言われた「背が高いですねえ」って。あの月夜に見た白い人のようだった。すーっとまっすぐ伸びた体は、清々しかった。

『どうも死は無いようなんだよ』
死ねば楽になるなんてことはないそうだ。だから生きるしかなかったんだそうな。人工呼吸器の管を自分で抜いて「恭子に会わせてください」と言ったそうだ。ガハクは、69才になった。愛とか、生命力とか、意思とか、言葉が動くのを目の前で見ている。(K)


 

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