2020年11月19日木曜日

ヘルメスの胸

 シャワーを浴びて出て来たガハクの体格を見て驚いた。胸筋がくっきり出ていて、まるで石膏像のヘルメスみたいだった。「男の人の胸の形ってほんとにあるんだねえ」と感心して眺めた。脚はウィリアム・ブレイクが銅版画に刻む人たちのようだ。

山で振る木刀代わりの枝も、ついに第二号を新調。古い方の枝は捨て難くて、庭の工房に大事に置いてある。テカテカに光っている。オイルを引いたのかと聞いたら、「木自体から出て来る樹脂だろう」とのこと。使い慣れた色と枝の曲がり具合が美しい。

私が6年かかって筋トレで鍛えた体力と体幹を ガハクは退院後の8ヶ月で作り上げた。命を救ってくれたのは先生や看護師。這い上がって来たのは本人の意欲。眠っている間も絶え間なく溺れぬように支えていたのはゴレンジャー部隊の格好をした天使たち。彼らの格闘ぶりを混濁した意識の中で眺めていたそうだ。ただ申し訳ないと思いながら。そして、祈りに応えてくれたのは、この冬のひかり。(K)



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