近所の電気屋さんに言われた言葉を思い出す。「いいことを教えてやろうか。あそこを止めちゃってよぉ、すっかりここへ引っ越しちゃえばいいんだよ」と。土地を借りて、ガハクと二人で少しずつ建て増しして来た彫刻のアトリエより、ここの方がずっと立派だ。暖房だって冷房だってすぐに効くし、家の中庭にあるここに比べたら、隙間風がスースー抜けてワイルドな空間は他人から見ても過酷過ぎるように思えたとしても不思議はない。家を買うタイミングが一年早かったら、そうしたかもしれない。地主の親族が家を建てると言うから、アトリエを移動して欲しいと言われたけれど、いや待てよ、そのままでいいやと言われたりもして、くるくる振り回されながら、なんとか逆境を切り抜けるために部屋の中で仕事ができるようにと増築したのだった。しかもガハクと手作りで窓枠からドアからトイレの穴掘りから全てをだ。電気検診に月に一度回ってくる知人が、ガハクの働きぶりに甚く感心して、フォークリフトが出入り出切るようにと軒を高くした骨組みに向かって大きく手をかざしながら、「これはご主人が建てたのよ!私は見てたのよ。Kさんが留守の時も一人でやっていらしたもの」と、私がいくら二人で作ったのだと言っても聞いてくれなかった。そのアトリエを引き払うことを勧めるなんて、、、この電気屋さんは、、、と内面の本心をぐさっと刺されるように辛かった。
でも今は違う。ガハクが死にかけたのだ。そして、二人で生き直す決意を固めたのだ。だから、家の片付けと大掃除が終わった今、やっとこの庭の工房も純粋に仕事のために使えるように大掃除と片付けを決行した。朝から夕刻までかかって、やっと綺麗になった。二つも仕事場があって使いこなせるだろうかなんて、もう考える必要もない。心のままに動くこと。どこで何をしていても畑にいても庭にいても小鳥のように歌うことだ。(K)
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