2020年3月13日金曜日

意識の覚醒

物と物との間の触れていない空間をどう彫るかで浮遊感が出ることが分かった。厳密なんだ。だいたい彫れている程度じゃどっちも浮かび上がらない。そのものの形だけじゃなくて、胸の形、袴の面が明確になって来ると、すっと離れて飛び始める。そういうものなんだ。手放すと飛び始める。くっ付いてちゃダメだ。離れてこそ飛び立つ。

明日の朝ガハクは退院する。私は9時半にナースセンターに行き、10時に担当医の関谷先生にガハクと一緒に説明を受ける。そして、41日ぶりに帰宅となる。

今夜は、三日前に移った病室の窓際のベッドからの眺めについて話すガハクの声に耳を澄ました。それまではカーテンに仕切られたベッドだったり、自分で動くことや歩くことさえままならぬ病状だったりしていたから、この数日の喜びはとても大きいのだ。

「飛んでいる鳥が見えるんだよ。なんて素敵なんだろう」と言う。新しい眺め、新しい目、その両方が出会った時のことを『意識の覚醒』と言うのだな。(K)


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