ガハクにデジカメの液晶画面を見せるのが日課になっている。しっかり食べてるよという証拠写真を見せたくて始めたのだけれど、今日はこの横顔を見て「トワンに似てる」と言われた。トワンはガハクに性格が似ているとは思ってはいたけれど、横顔まで似ていたとは知らなかった。
今日は口元を慎重に時間をかけて整えた。上唇がすーっと内側に入りながら、下唇を押さえ込むようにして触れるのが特徴で、この静かな面の傾斜を彫るのに苦労した。なんとか思うような形になった。でもまだ顎がダメだ。成り行きで作られたものの形は粗野で冷たくて硬い。もう少ししたら見えてくるだろう。時間が動き始めたから、大丈夫。
ガハクは今日やっと転院して、大学病院の呼吸器科に移った。そこで精細なデータを元に本格的治療が始まる。多臓器疾患も伴った肺炎だったそうで、これからはステロイドの投与がなされるという。肝臓と腎臓だ。今度は6人部屋で、ピンクのカーテンに包まれたガハクのベッドは真ん中にある。雰囲気も明るくて、そこに入った途端、酸素の数値がぐんぐん良くなって、99を出していたのも分かる気がした。このまま順調にいけば、2〜3週間で退院して自宅に帰れるそうだ。ガハク目を丸くして「え、そんなに早く退院できるの!」と喜んでいた。その明るい笑顔が今日の最大のご褒美。
帰りはすっかり遅くなってしまったけれど、山に沈むオレンジ色の太陽を眺めながらハンドルを握った。なにか歌っていたように思う。(K)
よく見られている記事
-
久しぶりにガハクが書いている。 新しい年。2022年の今日はもう3日の月曜日。 2020年の冬に僕が重症肺炎で入院してから二人で交代で書いていたものをKだけが記述していた。 去年の30日の午後、いつも二人で行く裏山の頂点に立った時、彼女がうづくまり動けなくなった。僕一人ではとう...
-
ガハクが72日ぶりに筆を取った。どの絵から始めるのだろうと見に行ったら、倒れる直前まで描いていた『Mの家族』だった。しかも踏み台に乗って高いところを描いていた。 また絵が描ける日が来るなんて、しかも今日は日曜日だ、朝の明るい光線の中で描いている 、、、ジーンとする想いに浸...
-
手の指のひとつひとつを磨いては彫り直し、彫り直してはまた磨いて、少しずつ温かな手にしようとしている。この手がうまく彫れたら、顔も同じように優しい形を与えられそうな気がして来た。 今日ガハクは、担当医とその上の大先生と専門医との3人に面談したそうだ。右肺に開いた穴は、ステロイ...
-
今日の午後久しぶりに絵を描いた。 何かをそこに発見して修正したり付け加えたりするという作業。どの絵をその時描くか、直感に従って絵を選ぶ。正面に置いた絵を描きながら、ふと横にある作品に手を加えることもある。 それがボクのいつもの描き方なのだが、今日は闇雲にどうにでもなれとばかり手...
-
スコットのダンスを見ていたら右腕にポツンと水滴が落ちた。あゝこれはよく何もないのにチクっとしたりする例の神経の突発的反射作用だろうと思いながらも当たった所を見た。実際に濡れて光っていた。左手の指で触わると確かに液体の感触が。雨漏り?思わず天井を見上げた。 白い人を見てからもう...