ドストエフスキーの『罪と罰』に出て来るソーニャとワーニャをときどき思い出す。二人に女の温かさと強さの原型を見る思いだ。「他にもう一人いたでしょう」とガハクに言われた。ラスコーリニコフのように私も彼女の存在を忘れていたのだ。名前を思い出せないもの。
ラスコーリニコフが金貸しの老婆を殺して金を盗んで逃げようとした時、外にいた下女だ。犯行を見られたと思って殺してしまったが、彼の心に残らないほどか細く小さな取るに足らない娘のことをソーニャは天使のように大切に思っていたんだ。ソーニャに指摘されて、彼の意識が少しずつ変わっていく物語。
善良で無垢で無名で小さな存在を天使と呼ばずして他に何と言う?(K)
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