画面いっぱいに深い青が塗ってあり一見するとそこには線もなく形も見えない。しかしじっと見つめていると中央にもっと暗い青で塗られた正方形が浮かんで来る。青の中の青。月のない夜の暗さの中に何かの形が見えるのか、闇の中の闇なのかそれともどこかへの入り口なのか…。そんな絵を昔見たことがある。
あれに比べれば青の時代と呼ばれるピカソの青ばかりを使った絵さえ多色に見える。
絵の色の限界というものはあるのだろうか?
絵は見る人によって成立する。見る人の色彩感覚に絵の色は委ねられている。仮に自分に見えて人に見えない、またはその逆に人に見えて自分には見えない色があるとすれば、この両者の色感覚の共通枠に収まりきらないゾーンがあることになる。
それでも絵を描く、絵を見る。人に見えて自分に見えない色のことなどほとんど気にはしないで。(画)