2021年10月30日土曜日

風下の岸の者たち

 安逸な生活を拒否して飛び立つふたりに、祝福あれ!無言の応援も沈黙の呪詛も、もうふたりには届かない。

生き生きとしていたのがいつだったかもう思い出そうにもその記憶さえも曖昧になった者たちが吐き出す言葉には、毒がある。真っ赤に燃える世間。赤と黒。火と炭の色だ。尊厳を保つために傾聴している風を装う者らに真実があるはずがない。

メルヴィルが言いたかったこと、書きたかったこと、伝えたかったことを『白鯨』の中の人物たちが生き生きと現している。意識の革命を起こそうと、呼びかけてくる。風下の岸の者たちよ、さらばじゃ!

ガハクの画室の真ん中に立つと、4枚の描きかけの絵に囲まれて、気持ちが昂ってくる。窓の外は紅葉が始まった山の色。空は秋の薄青だ。今日もパンが焼けたら、自転車で山に出かけるのだろう。(K)



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