エングレービングは溝にインクを詰めて、平らなところは綺麗に拭き取って刷る凹版だから、黒いところは溝の重なりがそのまま出る。圧殺されそうな重い空間にレンズを集中させた。
「うん、マチエールが出て来たな」とガハク、今夜は少し満足げだ。ずっと苦しそうだったのだ。削り取る作業を何日も続けていたから。ぺこぺこになった面でも傷や線が消えてさえいれば、そこはもう真っ新な場所なはずなのに、もっと平滑にしようと、削っては磨き、磨いては再び削り続けて、そこに線を刻み直していた結果が、このような線の強さを生んでいるということだ。
版画は白と黒のコントラストだけで出来ていると思っていたら、大間違いであった。彫刻と同じように、面の起伏が線の強さを生む。でも堕落した面の上には脆弱な輪郭線しか出て来ない。
そんな話を今朝、ご飯を食べながら話してくれたのだった。食事をしながらアートの話、しかもお互いの彫刻や絵や版画のことが語り合える日が来るとは、、、これが『安息日』の内意だったんだな。「あなたの思うままに行きなさい」という声に従うことができる日がついに訪れた。(K)
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