やっと『瀕死のアダム』が磨き上がったので、さて次はどれを仕上げようかと、未完成のまま放置されている彫刻を眺めて回った。その時々でぎりぎりまで彫り上げてある形を直していいものかどうか、そのままでも良いのかもしれない。先に進むことよりも後戻りする方が過酷だ。でも、そう思わせられるのは老婆の滅びの霊の仕業なのだ。どこからか、「好きなように生きなさい」という声が聞こえた。何をしてもいいのだ、何をやっていても、いや、何もやらなくてもいいのだくらいに思って全ての束縛から解き放たれよとは、ガハクの言。
ホットケーキを頬張りながら番茶を淹れた。まずはこの大理石板の2枚のレリーフを完成させよう!何年かかってもいいんだ。アダムを彫ったことで手に入れた新しい様式美を使えば、猥褻さや下品なグロテクスを超えて細くしなやかな体の中心がスッキリ出せるはずだ。再び勇気が湧いて来た。(K)
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