どこをどう磨くか、どこまで光沢を出すか、思案しながら進めている。腕の間にペーパーをかけてみたら、異様なほどテカテカと光って、風のつもりで彫った空間が水面の波立ちのようになった。もしかしたら、ここは水中なのかもしれない。この男、今はパッチリと目を開いて前方を見上げているけれど、ついさっきまで死にかかってどんよりとした目をしていたのだ。
ここまで彫り直すにも意識の変革が必要だった。目はなかなかうまく彫れない。生きた目、死んだ目、死にそうな目、それぞれ瞳が全く違う。意識に風が吹き込むと人は急に元気になる。愛というのはずいぶん長い時間をかけて熟成されるものなのだ。自分ではこさえられないものなのだけれど、工夫しながら苦労しながら水面から顔を出し、何とかここまで辿り着いた。地上のこの透き通った空気を胸いっぱいに吸い込んで、、、さあ行こういっしょに何処までも♪(K)
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