2020年4月27日月曜日

飛来した方舟

方舟がすっかり描き直されていた。帆布のようだった屋根が、銅のような光沢を放っている。金属的にしたいのだそうだ。空をうんと狭くして方舟を山の一番高い位置に置いたのは、あそこがアララト山という訳か。この絵は、洪水以前なのか、以後なのか、ずっと気になっていたのだけれど、やっと分かった。船を作るときは何処でもいいんだものね。何処にいようと水は必ず押し寄せて来るんだから。

パレットの掃除をしながらガハクが、「ゆっくりゆっくり良くなっていますというのは、死ぬことはなくなったけれど、どこまで回復できるかは分からないという意味だったんだね」と言う。命が助かるだけじゃダメなんだな。その先の生き方がどうかということが問題なんだ。

混濁した状態から抜け出してやっと話せるようになって最初に言った言葉が、「美味しいものを食べてね」というのと、「もうぞうけいは止めようと思う」というのだった。この二つのことが象徴的にこれからの生き方を示している。ガハクが今夜この二つの意味を話してくれた。

自分のことはまるっきり考えてなかったのだそうだ。この人には元気に生き抜いて行って欲しいという願いで話したことだという。
 「見栄やプライドは捨てて、お金が無くなったら生活保護を受けてもいいんだよ。美味しいものを食べて体を作って明るく元気に生きて行きなさい。やりたいことを思いっきりやって行きなさい」というガハクの遺言を今二人で実行している。(K)


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