2021年11月27日土曜日

全光(ぜんこう)

光を正面から浴びたモチーフの照明の状態を”全光”と言う。これは専門用語なんだろう。

庭に出て彫刻を眺めたら、今朝も全光だった。せっかく浮き彫りにした細かな形がぼんやりしてしまう。これは黒い石の場合は特にそうで、彫り痕の白い点々を消さない限りぼんやり感はずっと続く。ここは妥協せずに進むしかないと決意して、ゆっくり研ぎ始めた。

炎の側面に荒砥をかけ、その後200番、今やっと400番までかけた。少しグレーになって形が盛り上がって見える。こんな細かなことをこのサイズの黒御影石でここまでやったことはないから、冒険心が密かに湧き上がっている。これは、じっくりと腰を据えてかからねばならない探検なんだ。刺繍をしている女のような気持ちで冬の庭に立って労働をしている。芸術という意識の革命が静かに始まった。(K)


 

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