2020年9月11日金曜日

リュウノヒゲ

今年は苺があまり採れなかったのは、春先から雨が多くて日照不足だったせいもあるけれど、リュウノヒゲが密生していて苺を圧迫しているからだ。今日は朝から一大決心をして一本残らず引っこ抜く覚悟で庭に出た。蚊取り線香を腰からぶら下げて、モミジの根の周辺から取り掛かった。

リュウノヒゲは一度根を張ったら増えこそすれ、決して絶えることはない丈夫な草だ。良いことにも悪いことにも使われる。雨トイから流れ出る水を他所に向かわせる工作にリュウノヒゲで水路を作っている人を見て、感心もし、呆れたこともある。

トワンが子犬の頃、毎日アトリエに車に乗せて連れて行った。リュウノヒゲがびっしりと生えているのを見つけて、バサッと胴体着陸で飛び込んだ。草の波をかき分けて茶色の犬が泳いでいる。愉快な眺めだった。

アトリエの野原に除草剤が撒かれるようになってからは、リュウノヒゲはだいぶ無くなった。草が大嫌いな人がいるんだ。特にリュウノヒゲだけを狙って薬を振りかけて焼き殺しているらしい。そこだけ茶色になって枯れているからすぐ分かる。リュウノヒゲが枯れて地中に空洞ができちゃって、彫刻が倒れて壊れてしまったこともある。内心カッとなって怒れたけれど、とぼけている本人に状況だけを伝えて、気持ちを抑えた。悪事はやった人に戻っていくのだ。

そんなリュウノヒゲをすっかり綺麗に取り除いた後、ドラム缶に野菜クズを放り込んで作った堆肥を苺の苗に撒いて回った。来年の春こそ、大きくて甘い苺をいっぱい摘もう。(K)


2020年9月10日木曜日

寄り添う

トワンの胴体を細くしたら、却って2匹は近づいたように見えた。溶け合うことより分離だ。距離というものは数字じゃない。狭い場所を彫り切れれば、あとはそこから一気に冒険が始まる。それが彫刻だったんだ。(K)


2020年9月9日水曜日

生まれ変わるということ

トワンが描き直されていた。
「舌を出しているように描こうと思ってさ」ぺろっと口元からピンク色が覗いている可愛い姿がもう目に浮かぶ。いい絵というのは、仕上がる前から想像力を刺激する。線や色面で塗り分けられたかっこいい絵が描けても、愛する者が描けなければ寂しいじゃないかと。だから、せいぜい若いうちから売り出そうなんて姑息なことを考えるよりも、愛しいものを見つめて画布に納める技術くらいは身につけておきなさいとパリの有名画商の『絵画教室』という本に書いあるそうな。ガハクの蔵書で、私は読んだことはないけれど、挿絵も面白くて実践的で現場感があって、絵描きの心を見抜いていながらリスペクトがある。いちばん素敵なのは、絵を見る目を持っているということだ。もう現実は絶望的でつまらない話が多い世の中だから、トワンがまた一層可愛くなって出て来ると思うと、楽しくなる。意識が変わらなければ、何度描き直しても同じものか、それ以下のものしか出て来ない。だから意識の革命が先行するんだ。そのもっと手前に、変わろう、変わりたいという想いがなければ無理だろう。(K)


2020年9月8日火曜日

動物とトカゲ

昨日ガハクは、銅版を彫る手を休めて絵を眺めていたら空を塗り替えたくなったそうだ。でも、パレットを掃除したり、筆の点検をしていたら時間切れになっちゃったと。で今日は早速、空だけじゃなく、あちこちに手を加えたそうだ。油絵を描くのは久しぶりだったろう。色を使うのは、横で見ていても楽しい。
森の中にカピバラのようなのがいるけど、あれは何?と聞けば「動物!」と答えるガハク。動物か、、、、動物であるだけでいいんだな。美しいシルエットが描けたら、もうそれだけでも絵は完成する。

アトリエで昨日久しぶりに、あのトカゲに会った。毎日、同じ時刻に部屋を横切って外に出て行くトカゲだ。近寄ってじっと見つめても逃げないので、鼻先をちょんと突ついた。それでもキョトンとしている。変な奴。艶やかな青光りした若いトカゲだった。
今日も同じ時刻にトカゲが同方向へ横切って行った。でも、昨日のとは違って大きかった。尻尾が二つに分かれていた。脱皮しているのか?新たな尻尾か?そんなことを考えているうちに、さっと行ってしまった。くすんだ土色をしている年寄りっぽい風情だった。トカゲもいろいろだ。(K)



2020年9月7日月曜日

Hiromi go ahead !

今朝はblitzはやらずにすぐに庭に出た。トワンの石の周りの雑草を毟り始めたら、ガハクも参入。どんどん進んで庭はすっかり綺麗になった。それから路地に出て、塀際だけじゃなく、線路側の草も抜いた。いつもは、ガレージの辺りまでしかやらないのだけれど、今日のガハクは意欲的でずんずん踏切の方に向かって進んでいくので、私は家から一輪車を出し、抜かれた草を積み込んだ。荒地に3回も捨てに行くほどいっぱい抜いた。未舗装の地面がえぐれてすぐに水溜りができる凹みも土砂で埋めた。終わってから眺めたら、こんなに広かったかしらと思うほど、路地の奥まですっきりと見渡せる。

ガハクは私のためにやったのだと言う。「他人のためにやることしか力は湧いて来ないんだよね」という。草抜きなんか無駄だから、またすぐ生えてくるんだから、そんなとこまでやらなくていいんだよと言っていた人が、今日はぜんぜん違っていた。

このTシャツは去年か一昨年にガハクがリサイクルショップで見つけて買ったものだ。いつ見ても愉快になる。ガハクの名は広美なんだ。(K)


2020年9月6日日曜日

足の裏から始まる

食べ物を噛むことが歯を丈夫にするように、地面を蹴る時の反発が骨を丈夫にするそうだ。人は常に重力に耐えて生きている、なんてことを特に意識したことがなかったけれど、トワンが山野を駆けるときの跳躍は正にそれで、重力あっての美しさだった。足の裏が地面に接するところから彫り始めれば、生命力のある形がそこかしこにに発見できるだろう。

犬の彼と彼女が座っている地面は、実は月で、半月の形をしている。柔らかな光のニュアンスを出すために、もっと薄く静かな波の凹凸をつけて、軽やかな足がそっと置かれたように彫ろう。(K)


平和な暑い夏

昨日、アルプス乙女にかけていたネットを外して、殺虫剤を噴霧した。アブラムシが付いているのを見つけたからだ。農薬は、雨が降るまで半日もあれば効果があるそうだから、今夜の雨には充分間を取れた。

早速、枝にシジュウカラがとまった。隣家に猫が2匹いるのを小鳥たちは知っていて、あまり地上には降りない。だから、苺畑にヒヨが降りなくなった。地上に降りるリスクを考えているのだ。仲間が見張っている時に、さっと降りては、パッと小枝に戻る。

猿は、うちに剣の使い手がいることを知っている。それに早起きになって窓がいつも開いているから、やり難いのだろう。滅多に現れなくなった。猿の頭の中のデータに、あそこの庭には何もないと書き込まれたのだろう。平和な暑い夏だった。(K)


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