2022年1月21日金曜日

妻の肖像

絵が描けない。筆を持って画布に向かっても画面に届く頃には力が入らない。どうして俺は絵を描くのか?数週間経ってこれなら描けるかもしれないというものを見つけた。妻の肖像だ。

肖像というのを意識して描きたくなかった。現象に引きづられるのが嫌だからだ。一つの個性とかありようというものを念頭に置いて描こうとすると、その形の特徴とか個性的な印象とかいうものに激しく囚われてしまい、自発的に自由にキャンバスに向かえなくなるのを恐れるからだ。

しかし恐れていたら描けなくなるだろう。これ以外に描けるものがないならそれを描かねば。例えばゴッホが麦畑でたった一人グリーフに捕まって死んだように、描かねば死ぬかもしれない。

しかし妻が今生きている以上僕が死ぬ訳にはいかない。互いに相手を守るという約束を今こそ果たさねばならない。ここに描く主題を見つけた。これなら何とかなるかも。

「妻の肖像」を描く。(ガハク)



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