2021年4月22日木曜日

緑の光線

『ぞうけい』で使うでっかいチューブの絵の具の中で、緑色がいちばん減りが早かった。子供らに、山や野原をテーマにして描かせることが多かったからだろう。使う頻度もぜんぜん違う。山から街へ出かけて行って、都会の教室で教えていた頃でもそうだった。

その次に減りが早いのが水色だ。子供らのクレパスの箱を見ると、やっぱり水色が短い。彼らは空と海が好きなんだ。ゴシゴシ塗るから、すぐに減る。

あと、肌色のクレパスの減りが早い。(この頃はこの呼び方は人種差別に繋がるとして、使わないようになったそうな。子供らに教えられた。うすだいだいとか言っていたなあ)母の日、父の日、運動会の絵を描く度に、人間の顔をゴシゴシ塗らねばならない。

圧倒的な緑に包まれて生きている。光は緑を通して見ることになる。この風景を何色で描く?(K)



2021年4月21日水曜日

やりたかったことのリベンジ

ずいぶん前にやろうとしてやれなかったことを 今この絵の中でやるのだそうな。大きな顔が、デーンと真ん中に据えられている。絵の中から、こちらを見ている。画面の中に収まって大人しくしているつもりはない様子だ。目を見れば分かる。臆することなく物言わぬその口元には、笑みさえ浮かんでいるじゃないか。

こういう試みを、以前ガハクは木版画でやろうとしたんだ。その時思わず私が、「ソビエトのプロレタリアアートみたい」と言ったのだった。労働者のような明るい大きな顔がくっきり二つ並んでいて、しかも木版画の単色刷りだったし、まるで啓蒙ポスターのようだった。そんな私の言葉がグサッと刺さったのか、面白いと思ったのか、どっちとも取れる苦笑いをしたガハクは、続きをやらずに終わりにしたのを思い出す。

今夜は、あの時のリベンジなのだそうな。強い意思がなければ、決して行き着かないところに踏み出す準備が出来たということだ。その証拠に、今日は2度もガハクは山に出かけた。朝は歩いて、夕方はMTBに跨って。すごい体力だ。ハアハアしても、死にはしないことは知っている。死ぬっていうのは、全然違う。生きるってことの反対にあるものでもない。変わろうとしなけりゃ止まってしまうものなんだ。(K)



2021年4月20日火曜日

懐かしい音

3時の休憩にキッチンでひとりミルクティーを飲んでいたら、
「懐かしい音だったなあ」と言いながら、ガハクが2階から降りて来た。

若い頃からずっと聴いて来た石を彫る音は、私が出している音ではあるけれど、ガハクもその音の中で絵を描いて来たのだった。
「僕らはこういうことをして生きて行くんだと思っていたんだよね。そういうことを思い出したよ」と言う。

これ、ずっと彫り直したかったんだ。もっと良い形にしてあげるからね♪(K)





2021年4月19日月曜日

中庭の太陽

今朝ガハクは、チェーンソーの目立てから始めた。隣との境界に生えているヒバを伐る為だ。二人ともヘルメットを被った。おが屑が飛ばないように、地境に竿を立て、シートも張った。

うちのチェーンソーは電動でパワーがないのだけれど、今日は切れ味が違っていた。大きな幹が短時間で切り落とせた。目隠しのように中庭を覆っていた常緑樹が無くなると、驚くほど空間が変わる。今まで隠れていた木が、突然前に出て来る。オオヤマレンゲの葉が、明るく輝く。

日差しがいっぱいで眩しかった。(K)







2021年4月17日土曜日

新しい物語

ガハクが、「描き直そうと思って引っ張り出してはみたものの、どうしようかなあと迷っている」と言う。

これを描いた頃の想念まで降りて行くか、それとも、今の意識まで引っ張り上げるか。どっちにしろすぐには手を付けられそうもない。しばらく眺めていることになるのかな?

白い足がずいぶん生々しいから、あそこから入って行けばぐっと変わりそうだ。わずかな湿り気と明るい星空、辺りに漂う霊気は、見たことがある人でなければ描けないだろう。

でも、描き始めると見えて来るというのが本当だろう。きっとすぐに描き始めるよ。そしたら、また新しい物語が始まる。(K)



2021年4月16日金曜日

40年ぶりに彫り直す

40年前に彫った御影石の彫刻を彫り直すことにした。

3年前に突如倒れていたのを発見した時は、ずいぶん動揺した。誰が倒したのか、何があったのかすぐには理解できなかった。後で分かったのは、周りに密生していたリュウノヒゲという柴草が枯れて、地面に空洞が出来たから傾いてしまったのだった。

あの巨大な地震でも倒れなかったのに、草が枯れただけで簡単に倒れてしまうのにも驚いたけれど、除草剤をしつこく散布している隣人にも腹が立った。あの人のことをずっと怪しいと思ってもいた。

でも今は違う。この彫刻は重心がずれていて不安定なのだ。美術館の床ならまだしも、地面の上に設置していてはダメだったのだ。形も悪い。いつか彫り直そうと思っていた。でも、体力も時間もなかったんだ。

それが、解体作業で鍛えられ、気持ちもすっかり明るくなり、やる気が自然と湧いて来た。製材所のバイトも効果があった。まだやれるという自信が出たのだ。

「何が何の役に立っているのか最後まで分からないものだねえ」と運命の不思議について夕飯を食べながらガハクと話した。(K)




2021年4月14日水曜日

製材所のアルバイト

アトリエの引っ越しを一気に加速させ、助けてくれた製材所のフォークリフトが、これだ。普段は大きな丸太をこうやって機械の上に載せる仕事をしている。

太い丸太が台車の上に固定され、レールの上をゆっくり動いて行く。耳栓をしていても、帯鋸の鋭い騒音は頭の中に鳴り響く。お互いの声は聞こえないので、すべての指示はジェスチャーだ。モタモタしていると、耳元まで社長がやって来て大きな声で指導される。

「ちゃんと相手を見て二人で持たないと!」から始まり、「しっかり寸法通りに積み上げるように」になり、ついに今日は運び方のコツを教えてくれた。一挙に作業がスムースに進行。目標の12の山を積み上げて、今回のミッションは無事終了した。

よく冷えたリポビタンDが出て来たが、すーっと喉に入って、どこかへ消えた。ぜんぜん飲んだ気がしないほど、すっかり疲れちゃったんだ。

労働はアザとなって残る。ガハクは両腕に、私は太ももに何箇所もアザが出来ていた。知らないうちに、精一杯力を入れて材木を運んでたんだなあ。でも、疲れが癒えるとアザもやがて消える。今日は、よく働いた。(K)



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