2021年5月8日土曜日

踊る犬

 トワンはよく踊っていたなあ。ぴょんぴょん後ろ足で立ち上がっては、歌いながら踊る私を追いかけていたっけ。ガウガウ唸りながら、それがトワンの歌い方だった。興奮すると勝手に声が出る。自然とステップが始まる。

画室を覗いたら、今夜もガハクは、トワンと踊る赤い服の女の子を描いていた。そして、「いい音が出ていたねえ」と、さっきまで弾いていたバイオリンを褒めてくれた。ガハクもギターで同じ曲を練習している。リズムとノリが体に入れば、何とかなるだろう。そして、いつかはあの艶やかな紡錘形の音色が出せるようになりたい。そしたらその時、彫刻だって月のように輝き出すだろう。(K)



2021年5月7日金曜日

勘が戻る

 午後から降り出した雨が、シートをポツポツ叩いている。

石を彫る勘がやっと戻って来て、ハンマーがノミの真芯に当たるようになった。1時間くらいなら楽に彫れる。途中でお茶を飲めば、また彫れる。

隣の家の白い壁が絵画棟に見えて来た。裏の土手の向こうにある家は、工芸棟だ。スケールこそ違うけれど、昔と同じように空の下で彫っている。

トワンがいた頃はずっと閉めっぱなしだった門も、朝になると開け、夕方に閉めるようになった。新しい習慣だ。犬が来たら、また変わるかも♪(K)



2021年5月6日木曜日

水合わせ

 金魚が届いた。小さくてピチピチしている。金色がかった素敵な金魚も混じっている。口紅を塗ったようなセクシーな顔をした金魚がいたので、モンローと名付けた。

すぐに水槽に入れてはいけない。袋のまま1時間ほど浮かせておいて、やっとビニール袋を破ってバケツに移した。少しずつこの土地の水に慣らして行く『水合わせ』というのが大事なんだと、今頃知った。

6匹も死なせてしまって学んだことは、たくさんある。たかが金魚と思っていたけれど、ずいぶんデリケートな生き物なんだなあ。それぞれ顔も違うし、尾びれの形だってどれも同じじゃない。

また死んでいるんじゃないかと思って、朝ビクビク覗き込むバケツと水槽。そんな日が続いた。

でももう負けない。また育てることにした。自然の過酷さには抗えないけれど、何度でもやってみよう。そのうちに、私も金魚と話ができるようになるだろう。(K)



2021年5月5日水曜日

生意気ざかり

 今まで見て来たガハクの自画像の中で、これは一番元気がいい。なんでもやれそうな顔をしている。体の中にエネルギーが詰まっている。こういう風に描けるようになったのは、熟したということなのか、削ぎ落とした結果なのか?実際に、今のガハクは、このようだ。ピンピン飛び跳ねている。

金魚を飼い始めたら、可愛くて仕方がない。私が家で石を彫るようになってからは、「僕らのこういう生活には犬はいた方がいいよ」とはっきり言い始めた。しかもガハクは密かに、あちこちの保護犬の団体を調査していたらしい。そして、ずっと私の決断を待っていたようだ。夕方になって、「登録しておいたよ」ですって♪

ついに犬を飼おうと思うまでに二人とも成長した。暗い闇から抜け出した。(K)



2021年5月4日火曜日

息がぴったり合う

 相手と息がぴったり合って初めて面白さが分かる。何をするにもコンビ次第だ。でもほんとうは、コンビがよけりゃ物事が上手く行かなくても楽しいのだ。アトリエの解体作業がそうだった。労働は過酷だし状況は惨めなはずなのに、毎日が楽しかった。

今夜初めて『Baila la Luna』が弾けた。前田さんのスピードとリズムに着いて行けた。一緒に弾いてもらうと分かることがいっぱいある。弾けるようになると面白さは倍増する。

白御影石と黒御影石のコンビネーションを手彫りで探索している。ゴールデンウィークでハイキングの人たちが家の前を通る。彼らの耳にも届いているはずの石を彫る音は、小鳥の声や電車の音と同じ。自然の一部になっている。

コツコツコツコツ彫っていたら、穴の向こうにひょいと白い犬が現れた。久しぶりに会って話をする喜びに浸っていると、横からガハクに向かってぴょんと飛び上がり前足をかけて見上げている。おゝトラに好かれているらしい。いいなあ♪(K)



2021年5月3日月曜日

存在の暗示

 これが飛行機雲なら、物体は西に向かって飛んで行き、雲はゆっくり風に流されているわけだけど、風向きどっちだろう?この季節でこの天気だから、上空はたぶん西寄りの風だ。

UFOとしか思えない飛行物体を写した映像が公開された。写しているパイロットの声がうわずっていた。

疑う前に話を聞こうとするのが、好奇心だ。そして、直感には行動が伴う。得た情報を弾くか取り込むか、瞬時に決まる。もしかしたら人は、見る前にどっちにするかすでに決めているのかもしれないな。飛ぶことができる人は、ずっとその瞬間のことを考え、準備している。(K)







2021年5月2日日曜日

金魚と話す

トワンが死んだ時に、ガハクのペットロスを心配してくれる人がいて、「金魚でも飼ったらどうかしら。私が買って来てあげる。飽きちゃったら川に放せばいいんだから」と言ってくれた。

金魚でトワンの代わりが務まるだろうか?と思っていたけれど、実際に飼ってみると、だんだん可愛くなって来る。ガハクは遂に金魚に話しかけるようになってしまった。

「元気になったねえ。ほら、ご飯だよ」とか、いろんなことをバケツを覗き込みながら喋っている。面白いことに、金魚の方も反応する。ガハクにビスケットを渡したら、金魚を眺めながらかぶりついた途端、金魚がパーッと水面に上がって来て、「僕も僕も!私も私も!」と集まって来た。ガハクは小鳥だけではなく、金魚とも話ができるようだ。

この子、金魚みたいに見えて来た。(K)



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