2018年10月13日土曜日

天界の夢

今日から『天界の夢』を彫り直し始めた。まずは花びらから。今ならもっと柔らかい線が出せるはずだ。花の中で眠っている人の目をパッチリと開けたらどうだろう?そろそろ起きなさい!夢が今から実現するのだから。

目を開けて見る夢というのがある。そういう物事が転倒した瞬間を体験した。(K)


2018年10月12日金曜日

見ずに信じたもの

デナリに作品を搬入して来た。作品の入れ替えは定期的で日常化している。しかし今日はいつもと違っていた。
マスターが、今度われわれ二人だけの展覧会を店でしたいと思うがどうでしょうと言う、そうふと思いついたと。その時は店内に展示している商品類を全て撤去して絵と彫刻だけを展示する、1〜2週間くらいの期間、お客さんにはそれを見ながらコーヒーを飲んでもらってもいいし見るだけでもいい、もちろん購入も、集客は私がやります、と。
なんて嬉しいことを言ってくれるんだろう。発表のために作品を作っているつもりは既に全くなくなってしまったが、そう言ってもらうと同志を得たようで勇気が湧く。
「見ずに信じたものは幸いなれ」という言葉を思い出した。
アトリエから作品を運び出すといつも寂しい気持ちがするのに今日はその気持ちが起きなかった。

2018年10月11日木曜日

白い人の現出

『天界の夢』と名付けたこの彫刻、もう18年も前に彫ったものだ。フォークリフトで作業台の上にセットして改めて眺めると、大きな花陰にいろんなものが彫ってある。もうすっかり忘れていた。この異様にヒョロヒョロと背が高い人は何者か?、、、あゝそうか、これはガハクが見た白い人だ。月夜の光に照らされた二つの姿をダブらせて彫ってある。面白いことをしたものだ、、、それにしても素朴で、素直で、下手だなあ、、、

明日はいよいよデナリに『瀕死のアダム』を持って行くので、毛布に包んでロープをかけた。軽やかに見えても体重計で計ったら、73キロもあった。フォークリフトでライトバンの荷台に積み込んで準備完了。さあ、ガハクと県境を越えて東京にドライブだ。エッサエッサとお店の真ん中に展示する。何が起きるか、ゆっくりと世界は動く、愛は止まらない、ノンストップなのさ♪(K)

2018年10月10日水曜日

意欲の出どこ

「意欲を育てるにはどうしたらいいんでしょうかねえ」という質問があった。
どうしたらいいのだろう?そもそも意欲というものは育てられるものなのだろうか?
トワンが食べなくなった時、食欲を取り戻したのは口に無理やり押し込んだ流動食のおかげだ。食欲があってものを食べるのか食物が食欲を生むのか?
僕が絵描きになりたいと思ったのは絵が上手かったからか?賞を取り大人に褒められたからか?そういう子供はたくさん見て来たがその方面での意欲は長続きしない。絵を描き続けるには褒められ続けるだけでは無理なのだ。もっと別の、世間に認められるのとは違う内面的な理由が必要だ。
体験的には、こんな絵が描けるのかと嬉しくなる絵がある。それならもっと描きたいと思わせられる。絵が絵を描く意欲を生む。内燃機関のようなものだ。(画)

2018年10月9日火曜日

本編へ突入

トワンがどんどん軽やかになって行く。以前はこんなにスッキリとは彫れなかった。いつか死ぬ、別れは必ず訪れる、というような嫌らしい脅迫の念波は消えて愛おしさだけが残った。「剥奪されて私はラッキー」と町田康も歌っているじゃないか。これは終わりの始まりじゃなくて始まりの終わり、ここからが本編なのだ。心して踏み出そう。(K)


2018年10月8日月曜日

絵の完成

絵が完成するとはどういうことか。。
最初の構想から様々な手順を経て最後のタッチに至るという絵の描きかたをしていない。漠然とした発想から始め、生まれてくる様々なイメージを時に集中させ、修正し、捨て去る…。そうやって描いている以上、絵の完成はもうこれ以上手を入れる必要がないという事かと思ってきた。
しかしそうではなかった。
絵が完成するとは、その絵が大好きになること、いつまでも見ていたくなるほどの、自意識を離れた対象として愛することができるものになることだった。(画)

2018年10月7日日曜日

出航

トワンが調子を崩したのは台風が通過した日だったが、今回は大きく避けて過ぎ去った。
「みんな知らないだろうけど、トワンがいなくなったらすっかり変わっちゃうんだよ」とガハクが言う。そう、天使の力を見くびっちゃいけない。生命力が湧き起こる場所を教えてくれるのは彼らだけなんだ。ササミを小さくちぎって口元へ放り込むと、くちゃくちゃ美味しそうに食べるようになった。1週間ぶりに風呂場へ足を洗ってもらいにガハクの後をとことこ歩いて行く姿がなんとまあ美しいことか。こういうシーンを忘れちゃいけない。

今夜は水の中の月を彫り直した。とおめいなまるい球は今夜出航した。風がぐんぐん湧き起こり渦を巻いて男の足を支えている。この人は重力の二乗倍で月に向かって上昇中なのだ。(K)

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