2020年12月5日土曜日

曖昧さが消えて

袴の腰の線がやっと決まった。このラインを導き出すのに、ずいぶん苦労した。出来てしまうと当然そうなるべくしてそうなったように見える。綺麗だなあと思いながら眺めている。ここまでやり切ったことがあっただろうか?限界までやると言うのではなく、好きなだけやってみたいのだ。興味や意欲が湧き続けていれば、いつかはきっと出来上がるだろうと確信もしている。

以前は形が見えなくなるとしばらく放置していたが、今はずっとやり続けている。やれることがそこかしこに見つかるからだ。

バイオリンを努力しなくても弾けるようになった。毎晩弾いているけど、飽きることがないし、疲れることもない。出て来る音が面白いのだ。指もちょうど良いくらいに動いてくれる。指づかいも難しく考えなくなった。やっているうちに合理的な位置が浮かんでくる。これは、天使が教えてくれるというヤツだ。ピンと来るやり方がいつか見つかるって、分かったんだ。(K)



2020年12月4日金曜日

動き始めた赤

赤い色は一様では無いということが、今夜分かった。赤い街が深く刻まれ始めた。この壁は、何世代にも渡って傷つけられ修復されて来たのが分かる。

一方、天使には年齢がない。いつも艶やかで朗らかで、そして意図を持たない唐突な行動をとる。「思うがままに行くがよい」と言われていて、その言葉のままに育った子供のようだ。

「人の中に神を見い出す行為が芸術」なのだそうだ。これは、タルコフスキーの言葉だ。彼が映し出す人たちが美しいのは、そういう風に人を見つめているからなんだな。他人に自分を映すのではなく、人に神が映っているのを見つめている。自分のことばかり言い立てているうちには、決して見えて来ない人の中の無垢。自分を忘れた時に やっと見つかる。だから映画のタイトルは『鏡』なんだな。(K)



2020年12月3日木曜日

イノシシの峰

 急斜面を斜めに横切りながら登っていくイノシシに向かって、一声「ワン!」と叫んだトワンのことを思い出した。山で獣に遭遇しても、もう決して追いかけようとはしなかった。私たちもそうだ。雪の日には山に入らず、麓を散歩するようになった。死にかけた犬は、賢くなった。死にかけたガハクは、生まれ変わった。失敗が許されるのは一度だけだ。

タルコフスキーの『鏡』を初めて観た。彼の自伝的映画ということだけ聞いて、何も知らずに見始めたら、女たちの重い感情がのしかかって来て、参ったなあと思いながらも 釘付けになった。映像が美しいのだ。霊的なものを風景や事物に語らせている。夢と現実の交錯がリアルに伝わって来る。こういうことが彼自身の日常の中で しょっちゅう体験されていたのに違いない。

いつもなら今夜は秩父夜祭なのだけど、コロナのせいで中止になってガラガラの電車が通過していく。(K)





2020年12月2日水曜日

しっぽの救出

石のグレーの縞模様からしっぽを抜け出させた。真っ白のふさふさのしっぽになって、ホッとしている。汚泥にお尻がくっ付いていたんじゃ可哀想だ。揺れたり下がったり立ったりして、感情を豊かに表現していたしっぽだもん。

最近ガハクが立て続けにトワンの夢を見た。死んでから2年経って、やっと夢に現れたと喜んでいる。家の中でも、山の中でも、いつものあの姿そのままに、パッと飛びかかってはふざけたりするのだそうな。可愛いじゃないか。

愛は試されるのか、実現されるのか、その真意が夢の中で露になる。(K)



2020年12月1日火曜日

絵の中に街が現れるまで

広場が温かく感じられたのは、正面の建物が高くなったせいだった。空も白くなっているし、家の向きもだいぶ変わった。鳥の目で見たような風景だったけれど、今は走り抜ける馬の視点も感じられる。これは視線が強くなったからだな。画家とは、裏側を描ける人のことだ。彫刻もそうだもの。(K)



2020年11月30日月曜日

陽に包まれて

 夜になっても尚明るい天界の野原を 馬に乗ってゆくこの人は誰だろう?梢は光に膨らんでマシュマロか綿菓子のようだ。

この絵はどこにも出してないなんておかしいなあ、、、どうしてだろう?派手じゃないからかな。弱く儚く脆く見えたからだろうか。すぐには理解できなかったんだな。

ガハクの絵の選定はほとんど私がやって、展示の方向性を決めている。でも偶然は必然、それで良かったんだ。赤ん坊のように守られなければ汚されるのが『美』だもの。キャンバスの裏に「2014年」と書いてあるから、まだトワンがいた頃の絵だ。(K)



2020年11月29日日曜日

翼が生えるまで

背中から出ている爽やかな霊気が彫れたら最高だ。翼が表象しているものは『深慮』だそうな。

アトリエに着いたらまず薪ストーブに小枝を突っ込み火をつける。筋トレをしている間に 9度だった室温は、12度まで上がって、やがて16度になった。作業していると暑いくらいだ。今日は風向きも良くて、煙が川上に向かって流れていく。紫の煙を眺めながら、アトリエ前の野原をジョギング。足首の筋肉が意外と弱いのに気が付いた。自転車では感じないこわばりがある。少しずつ慣らして行こう。

昨日植え付けたレタスの色が明るくて可愛らしい。「何をしていてもいいのだよ、全てがあなただから」とずっと言われて励まされて来た。どれも少しずつ出来上がっていく。ゆっくり作れたら最高だ。(K)





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