2020年12月3日木曜日

イノシシの峰

 急斜面を斜めに横切りながら登っていくイノシシに向かって、一声「ワン!」と叫んだトワンのことを思い出した。山で獣に遭遇しても、もう決して追いかけようとはしなかった。私たちもそうだ。雪の日には山に入らず、麓を散歩するようになった。死にかけた犬は、賢くなった。死にかけたガハクは、生まれ変わった。失敗が許されるのは一度だけだ。

タルコフスキーの『鏡』を初めて観た。彼の自伝的映画ということだけ聞いて、何も知らずに見始めたら、女たちの重い感情がのしかかって来て、参ったなあと思いながらも 釘付けになった。映像が美しいのだ。霊的なものを風景や事物に語らせている。夢と現実の交錯がリアルに伝わって来る。こういうことが彼自身の日常の中で しょっちゅう体験されていたのに違いない。

いつもなら今夜は秩父夜祭なのだけど、コロナのせいで中止になってガラガラの電車が通過していく。(K)





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