2021年2月13日土曜日

光は春だ

 今朝のガハクの山散歩。

太陽が高くなって来た。木の芽が赤く色づくと春だ。空気が柔らかなレースのように揺れている。トワンが先を走って行くのが見えるようだ。楽しかったことが記憶なら、その記憶を背景にして浮き上がって来るのが愛。

でも、ほんとにトワンが来ると言う。しっかり根拠地を作っておこう。(K)



2021年2月12日金曜日

毎日精霊に会いに行く

 解体作業が始まってからもガハクは毎朝山に出かけている。精霊に会う為だそうだ。

小鳥たちの声が騒がしい梢の下を通りながら、
「きっと僕に警戒しているんだな」と思って過ぎた。突然ピタッと鳴き声が止んで辺りがシーンとなる。そのタイミングがおかしい、、、地形のせいかな?と、ガハクはもう一度同じ道を戻って試した。

「お〜い 君たち」
「何 言ってるんだい」
「ちょっと ちょっと」

小鳥たちが騒ぐのも、突然静かになるのも、ガハクとはぜんぜん関係なかったことが判明。精霊たちは何を考え何を想って生きているんだろう。

『ガジュマル』の木に夏の太陽が照りつけている。この梢の下にガハクの親友が描かれている。彼もまた、永遠の光の中でキャンバスに向かって立っているはずだ。(K)



2021年2月11日木曜日

フォークリフトとパレット

 珍しく夜中に目が覚めたガハク、高所での解体作業にあれこれ頭を巡らしていたらしい。なので今日は早速、フォークリフトの爪にぴったり合うパレットを作った。人が乗ってもグラグラしない、がっちりした足場になるものを。

出来上がったのがこれだ!早速試乗してもらった。グイーンと爪を最高位置までアップしたら、屋根が見下ろせるくらいまで上がった。周りにぐるりと手すりを付けた方がいいかな。にしろ、必ずセルフビレーして作業するようにしよう。

このフォークとパレット、(アトリエを移転した暁には)庭木の剪定にも役に立つはず♪(K)



2021年2月10日水曜日

雨の音

 ゆうべ描かれた雲から 今夜は雨を降らせていた。雨が表象するのは、真理だ。

森の葉っぱが一斉に鳴り出す。パパパパが、タタタタになって、ダダダダに変わり、ザーッと溶け合う頃には、もう何にも聞こえなくなる。一本一本の木を描き分けることが出来るようになったガハクは、雨の一粒一粒が落ちる線もきっと愉快に引いているに違いない。

毎朝ガハクが山に登って降りてくるまで、だいたい40分くらいだ。気に入った木には呼び名を付けている、ジロウとかタロウとか。魚を獲るために川に網を投げている人は、雨の音が近づいているのに気が付いている。でも知らんぷりして、まだ川から上がろうとはしない。今という瞬間を生きているのは、どっちだろう?雨を描く人か、魚を獲る人か。人は目的によって知られる。何で生きてるの?という問いが、何で死んじゃうの?という問いより重要になって来たガハクである。(K)





2021年2月9日火曜日

復活したよ!

ガハク今日は大活躍で、アトリエのトタン壁をべりべり剥がして回ってくれた。そして夜はいつものようにキャンバスに向かっている。しかも白の絵の具まで練ったそうだ。

「最初はぐったりしていたんだけど、やり始めたらだんだん元気が出て、復活したよ」と言う。空に白をぐいぐい塗っていた。間にグレーの雲が縦に流れて縞模様を作っている。

少し疲れているくらいの方がいいのかな。何も考えないで描いている時にいいものが出て来たりするもんねえ。不可能を実現させるのは他のもので、私たちはただ戸を叩き続けるしかないとシモーヌ・ヴェイユは書いているけれど、そこまで分かっているのに何であんなに早く死んじゃったんだろう?とガハクに話しかけた。

すると、「目の前のことから逃げれなかったんだね」という答えが返って来た。あゝ熱意か。外にあるパッションと内なるパッションがぶつかり合って立ち向かう。最後は体がすっかり消耗しちゃったんだろう。調子が悪いと早く寝ようとか、今日は休んだ方がいいかな、とか思えなかったんだね。

二人でやれば何とかなる、何でもできる。ガハクが生きて還って来てくれて、ほんとうに良かった。(K)



『猫を抱く人』

 遂に今日『猫を抱く人』を運び込んだ。ガハク40の頃で、抱かれているのは黒猫のジュニア、シッポが短くて体が大きな猫だった。こんな風にいつもガハクと一緒にいたんだ。猫の毛並みに手が溶け込む感じを彫りたかったのだけど、今ならもっと猫は柔らかく、手は優しく彫れるだろう。大理石の冷たさが消えるくらい温かく彫れるだろう。また彫り直していこう。ここでならずっとやれるだろう。どれもこれも好きなようにやり続けられる。

作戦会議の結果、明日はトワン像とガハクの胸像もここに移すことにした。机や道具も運び込んで、いよいよここがアトリエになる。向こうには解体作業だけに通うことになる。

千里の道43日目無事終了♪(K)



2021年2月7日日曜日

絵が生まれる瞬間

彼は命の湧き出る場所を見つけたようだ。一気に潜って行くぞ。真っ直ぐ 光の差す方へ。

ガハクは元気がいい。大きな大理石の立像を今日は二つも運んだのに、夜になって大きなキャンバスに向かっている。この白を何と見るかだ。凄烈な水、強烈な光、人を無にするエネルギーの照射。

ぼんやりとした曖昧さに包まれた若者には、輪郭がない。成熟しなかった年寄りは、醜悪だ。変わろうとしなければ変わりっこない。ずっとこのままで良いなんて人は、いるだろうか?

この人が丸裸で何も持っていないのに美しいのは、目的に叶った形をしているからだ。裏も表もないものは安心して見ていられる。眺めていると、スーッとする。そういうスフィアは自分では作れないものなんだ。(K)



よく見られている記事