2020年2月19日水曜日

目は心の灯火

危機を脱してうっすらと目が開いた時のことを決して忘れないだろう。今またガハクと視線を合わせている。瞼の線を少し変えるだけで、光が変わる。優しさが宿る。そういうのを彫るのが彫刻なんだな。それが分かったから、トワンの目も彫り直せる。あれもこれもみんな目を彫り直してやりたいが、まあどうでもいいんだ。このひとつがまず出来れば、次はまたあれをと浮かんでくるものだから。あと10年またガハクとやれる気がしている。素晴らしい日がやって来た。あの日怯えて夜明けを独りで待っていた救急センターの暖房が効いた廊下のソファがあって今がある。超えねばならぬ時をじっと耐えて今がある。

ガハクが「今日やっと安心できた」とぽつっと呟いた。昨日は私が安心したのだけど、当人はまだ不安だったんだなあ。気を引き締めてこの続きを生きよう。

明後日ついに救急の医療センターを退院して、大学病院の呼吸器科へ転院することになった。20日間よく耐えたガハクの目は意識の混濁から脱して澄み切っている。白目がとっても綺麗なんだ。(K)


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