2020年11月20日金曜日

『サクリファイス』

やっと映画『サクリファイス』を観た。立ったままで話す人たちの重苦しい会話がいつまでも続くので、これは堪らんなあと思いながら、目を離せずにいた。「これを見ても何も変わらないなんておかしいよ。僕はタルコフスキーのストーカーを見て変わったもの」とガハクが言うくらい、彼の美意識とガハクのそれは一致する。「ダビンチよりピエロ・デラ・フランチェスカの方がいい」と映画の中で郵便配達夫のオットーに言わせていた。

うちのパソコンの背景画像がウラジミールの聖母で、タルコフスキーの部屋にも同じ絵の複製が額に入れて掛かっていたのに気が付いた時はとても驚いた。人が人に繋がるときは、わざわざこっちから出かけて行かなくても、向こうからやって来るんだなあ。

「皆死を怖れているけれど、そんなものはない」と主人公の言う台詞は、何度もガハクの口から聞いた。死の恐怖を前にしてじっと佇むより、毎日水をやる、毎日絵を描く、毎日石を彫る、そういうことが木を生き返らせ育てることになるんだ。(K)





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