2019年3月6日水曜日

足元と先端

これを彫り始めた頃、出かける度に池袋駅の地下コンコースの花屋に寄っては、チューリップを一輪買って帰った。花屋のチューリップはどれもきっちり閉じていて、これから開く準備をしていた。スーッとしていてフォルムの綺麗なのを選んだ。だいたいいつも赤紫。家に帰ってすぐに水切りして銀色の花瓶に生け、花が開かないうちにデッサンをしていた。

どうしてここまでしか彫らなかったのだろう、もっとここは思い切って抉ってもいいのにと思いながら彫っている。見ているから気が付かなかったのだな。「見ないで描けないものがどうして見て描ける?」という言葉が思い出された。

あれから随分時間が経った。情報として得たものは花の構造だけじゃない。包むものの柔らかさと内部に秘められた空間や匂いを感じながらくっきりとはっきりと彫ろうとしている。躊躇なく。(K)


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